「能登半島地震」被害を踏まえて  ~  求められる家づくりとは(堤 太郎)

2024.5.4(写真は珠洲市の田畑に現れた高さ1.8mの断層)

本来であれば年始のご挨拶にて、「省エネ基準適合義務化」を含む2025年に予定されている法改正にも触れながら、「(高性能を当たり前とした)今だからこそ求められる家とは」などのお話をしていたかと思います。

ところが皆さまご承知の通り、2024/1/1の16:10、石川県能登半島を震源とした、

・マグニチュード7.6

・最大震度7
・5メートルの大津波警報発出

・地殻変動最大3m

という規模の地震が発生し、石川県、新潟県、富山県、福井など広範囲なエリアで被害が出ました。

特に激震地を含む石川県では4/30現在で

・死傷者1,444人(死者245人、行方不明者3人含む)

・住家被害だけでも78,568棟(全半壊23,792棟含む)

という甚大な被害となっています。

(出典:石川県のサイト「令和6年能登半島地震による人的・建物被害の状況について」)

https://www.pref.ishikawa.lg.jp/saigai/202401jishin-taisakuhonbu.html#higai

また、新潟県、富山県、福井県、長野県の近隣県を含めると、4/23現在で住家被害は118,029棟にまで及びます。

(出典:内閣府のサイト「令和6年能登半島地震による被害状況等について」)

https://www.bousai.go.jp/updates/r60101notojishin/r60101notojishin/index.html

上記のように被害の実態は徐々に明らかになってきていますが、被災地の復興に向けての道のりは相当に厳しいものを感じています。

その大きな理由として、現地の倒壊家屋の瓦礫撤去や、倒壊に至っていないがもう住み続けることができない家屋の解体撤去が遅々として進まないことが挙げられます。

それは1月度から4月度に渡って実施した現地調査でも伺い知れます。

私が所属する(株)M’s構造設計(および微動探査実施、地盤被害調査実施の各企業様との同行)による現地調査は

・1/21 新潟県液状化被害エリア

・1/31 輪島市内を中心に

・2/28 輪島市~門前町他

・3/27 珠洲市~穴水町他

・3/28 七尾市~志賀町~金沢市付近

・4/14 七尾市を中心に

と、ほぼ1カ月ごとに実施しましたが(3/27の珠洲市エリアの調査は「みんなの住宅研究所」として松尾理事他の方々も参加されました)、能登半島エリア全体の行き来の陸路が限られており(移動距離も普通に片道100kmを超えます)、かつ上下水道の復活も見込めない状況下では、私達だけではなく、不明者探索やパトロール、給水・物資補給などで全国から集まった自治体の方々も含めて、宿泊可能な金沢市を拠点とした動きしか取れない状況でした。

そのような中で、日にちと共に進捗を感じるのはほぼ、道路の整備状況のみという印象です。
多くの倒壊家屋も道路部のみ撤去され、道沿い、」敷地内はそのまま、という光景が各地で続いています、、、

今後の本格的な調査も進めば、さらに詳細な被害状況も判明するでしょうが、今回の震災の特徴として

・耐震性能の低い木造住宅の倒壊

・火災

・液状化被害・土砂崩れ、地割れ(断層のずれも含む)

・津波被害

と、あらゆる種類の被害が単独もしくは複合的に見受けられ、もはや建物自体の耐震性能にとどまらず、常に災害対策を視野に入れた取り組みが必要なフェーズにあると思われます。

報道でも、たとえば石川県内灘町の事例で(新潟県の広範囲な被害は佐藤理事が直接確認)、大地震によって起こる大規模な液状化からの「側方流動」による被害の凄まじさが紹介されました。液状化層が上部の建物ごと動いたり、道路が隆起・陥没し、元の街並みからはほど遠い光景となっています。

今までは建物、敷地単体での液状化対策が語られるのがほとんどでしたが、特に側方流動が起きるような震災エリアでは、

・建物

・道路

・インフラ(電気・上下水道・ガスなどのライフライン)

のすべてに甚大な被害を及ぼしますので、継続してそこに住み続けるかどうかまでの判断が迫られると感じます(液状化は繰り返し起きることも指摘されています)。

その反面、もちろん倒壊した住宅ばかりではなく、築年数が浅めで外周部耐力壁に面材を張った耐震性の高い住宅は、(外観からの判断がほとんどにはなりますが)しっかりと建っていましたので、やはり耐震性能向上は必須であることも実感できました。

現時点での総括としては、住宅を提供するプロの立場として、少なくとも建築する敷地単位ではなくエリアとしての特性を把握した上で、大地震時にも耐え、インフラが断絶しても(簡易トイレなども含めて)備蓄さえちゃんとしていれば居住者が健康性を損なうことなく住み続けられる、シェルターとしての家づくりが求められる、となるでしょうか。

引き続き、情報発信・問題提起し、会員を中心として議論していく所存です。

最後に、
亡くなられた方々のご冥福を、行方不明の方々が一刻も早く見つかりますことを、心よりお祈りします。
また、被災された方々、ご家族、関係者の方々には心よりお見舞い申し上げますとともに、一日も早い復旧・復興を心からお祈りいたします。